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プロフィール

Author:ドギー本澤
毎日いろんな香水の香りをかいでは、分析したり連想をしたりしています。最近はレビューがメインですが、時にショートストーリーも。

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香水ドラマストーリー

あなたはまだ出会っていないかも知れない。

この世には、「信じられないくらいいい香り」「思わずのけぞるようなすばらしい香り」が存在する。
 
目に見えない香りにこめられた、秘めやかな意味や記号。
それは、ときとして言葉よりも明確に、音よりも鋭敏に、相手のハートにダイレクトに届くメッセージとなる。

「香水のレビュー」では、古今東西の名香を中心に、男女問わずおすすめの香水を自分の目線でレビューしています。
「香り」をモチーフに、日常のささいな心模様、シーンをショートドラマストーリーにして書いています。
評価は、毎週投稿している「@コスメ」の口コミと同じように、☆の数(1~7点)にしています。

☆(1)私には似合わないみたい。おすすめしません。
☆(2)うーん、私にはピンと来なかった。
☆(3)普通。可もなく不可もなく。
☆(4)まずまず。なかなかよくできてます。
☆(5)よかった!自分にぴったり!リピートしたい!
☆(6)おすすめ!最近のHit!他の人にも教えたい!
☆(7)最高っ!超おすすめ!みんなもぜひ使ってみて!

評価は自分の独断と偏見ですのでご了承ください。また☆7は、よほどの作品でない限りつけません。

あなたは 本当に好きな香りに もう出会っていますか? 
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ペンハリガン ローイングラドクリフ

  香水のレビュー(満点は☆7)
☆☆☆☆☆★★(5点)


「ちょっとマシュー。大変なことになったわよ!」フローラが言う。
「何?今度は一体何だい?」双子のマシューがうんざりして返す。
「ラドクリフが、遂にいなくなったわ。」
「え?ラドクリフさんが??」
「そうよ。いつかこうなるんじゃないかって思ってたあたし。しかもドロシア叔母様とボーレガードも、どこかに行ったっきり戻ってないわ!」

双子の妹のドヤ顔を見ながら、全く楽しそうだなフローラは、と思いつつ、それでもマシューは、ラドクリフの失踪を聞いて動揺していた。何があったんだろう?…あの人はいつもお酒の匂いがしてた。たばこをふかして笑っていた。それでも時々さみしそうな顔をしてた…。

英国の老舗香水ブランド、ペンハリガン。「享楽的なラドクリフ」は、英国貴族の肖像と架空の物語を下敷きに展開する高級香水コレクション、ポートレートシリーズの中の1本だ。ジョージ卿と愛人クララの間に生まれたラドクリフ。彼の肖像トロフィーはライオン。イメ―ジは自由と強さ。だがつい最近、ラドクリフを含むポートレート3作品の廃番が決まった。

今回廃番となるのは、ラドクリフとドロシア伯爵夫人とボーレガードの3人。この3つの香水は、現在店頭に並んでいる在庫がなくなり次第、終了だという。

このニュースが愛香家の間に広がるやいなや、鬼のようなスピードで店頭からこの3作品が売れており「駆け込みラドクリフ」「ラス1ドロシア」などの言葉がネットに飛び交うこととなった。では、どんな香りかと言うと。

ラドクリフの肖像であるライオン。その重たい真鍮キャップを外す。この冷たさと重厚感がたまらない。暗青色のジュースをスプレーする。

トップ。つけてすぐ広がるのは、透明なジンの香りを思わせるジュニパーベリー。すぐに、ダークラムの豊かな香りが広がってくる。ほんのりビターで冷たい洋酒系のトップ。それはパーティーの始まり。グラスの触れ合う音。挨拶と笑い声。そして誰かのひそひそ話。

5分後、かなり焦げ茶色の香りになってくる。紙タバコの葉の部分を嗅いだ時の、深くコクのある香りがしてくる。甘いハニーの香り、シナモンやクローブなどのスパイス、それらのフレーバーがタバコに混じり合い、深みのある大人の匂いになってくる。同時に温かみのある辛みが増してくる。ジンジャーだ。英国のパーティーにつきものの辛いジンジャービスケット。その香ばしい辛みが、酒とたばこの香りをじんわり温めてゆく。伯爵家のパーティールーム、乱反射する金シャンデリアの光の下、タバコとジンジャーの香りが広がってゆく。このミドルが4~6時間ほど続く。

ラストは大きく変わらず、温かみを増したジンジャーの辛みとタバコの匂いで終息する。付けて30分くらいのミドルはトム・フォードのタバコヴァニラにかなり似ている。タバコとスパイス香の強さはタバコヴァニラが上。ただ、香り立ちが穏やかで、女性でもつけやすいのはラドクリフの方だと思う。自由に生きる人の酔狂な香り、それがラドクリフだ。

「ラドクリフはね、きっと消されたのよ。」

不意にフローラの声が聞こえてマシューは我に返る。双子の妹は犬小屋の前に置かれたエサをわざと小屋から遠ざけていじわるをしている。犬がのどの奥で彼女に唸っている。それが彼女の本性だ。マシューだけが知っている。

「ブランシュ夫人が遂に復讐したんだわ。だって、夫のジョージ卿をクララみたいな女に寝取られたんですものね!」

それが屋敷で「天使」と可愛がられてる子の言うことか?とマシューは思う。でも言わない。

「でしょ?絶対そうよ!あんたはどう思う?」
「ぼく?ぼくは…。」

突然消えた3人。彼らに何があったんだろう?マシューは門に続くぬかるんだ長い道を見ながら思った。たくさんの足跡、馬車の轍の跡がついた道は穴だらけで、まさに今の屋敷内そのものだと思った。泥だらけで、ぐちゃぐちゃで。彼はぼんやり考えた。

失踪?それとも…。だとしたら誰が?…無理だな。この屋敷の人はみんな怪しい。だってここではみんな仮面をかぶって生活してるから。コンスタンスさん以外は、みんなフローラと同じ。人前ではいい子を演じて、陰では悪いことを普通にしてる人たちばかりだ。

 それから広大な庭園を眺めて思った。

この屋敷には本当にたくさんの動物が住んでる。そしてその誰もが、いつか誰かをかみ殺してやろうと、いつも目を光らせてるんだ…。

不意に一陣の風が吹いた。マシューの鼻にふっと甘辛いタバコの匂いがかすめたような気がした。ラドクリフのライオンのような笑い声を思い出して、ちょっと悲しくなった。

見上げた空はくすんだ色をしていた。それで
もどこまでも青く広がっていた。

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フラッサイ ブロンディーヌ

 香水のレビュー(満点は☆7)
☆☆☆☆☆☆★(6点)


長い間、香水の旅をしてきた。そしてまた一つすばらしい香水と出会えた。フラッサイのブロンディーヌ。この香水を肌にのせたとき、一筋、迷いの森からの出口が見えたような気がした。

フラッサイは、2013年にアルゼンチンのブエノスアイレスでブランディングされたジュエリー会社だ。しかしながら創業者のナタリア・オウテダ女史は、長年ニューヨークのクエスト、ジボダンで香水マーケティングに携わり、エバリュエイターとして活躍してきた人物。いわば香水業界の裏の裏まで知り尽くしている方。そんな彼女が故郷ブエノスアイレスに戻った際、香水瓶ペンダントを創りたくて起業したそうだが、そこから自然に香水づくりも進んだようだ。

最初に創った3作品は、辛口批評でおなじみの「世界香水ガイド3」でどれも高評価を得ており、世界中の愛香家が注目する契機ともなった。中でもトップセールスを記録したこのブロンディーヌは、ブランドの代表的な作品として人気が高い。これはフランスの古いおとぎ話に登場するブロンディーヌ姫にインスパイアされた香り。リリースは2017年。調香はTFのヴェルベット・オーキッドなどで知られるヤン・ヴァスニエ。

幼い姫が王の後妻によって森に置き去りにされるおとぎ話、ブロンディーヌ。彼女は白猫や白鹿に助けられながらも、父に会いたい一心で悪い動物の甘言にのってしまう。その罪を償うべく幾多の試練に立ち向かう健気な姿が描かれる物語。ナタリア女史はこの物語からどんなインスピレーションを得たのだろう。実際にブロンディーヌの香りを嗅いでみる。

ブロンディーヌをスプレーすると、まず最初に広がるのは、エキゾティックな白く厚い花弁の香りだ。フランジパニやタヒチアンティアレのように、ふんわり華やかなホワイトフローラルが炸裂する。ガーデニア系が好きな方は悶絶必至のトップ。

1分後、このホワイトフローラルの影にサッパリした柑橘オレンジの香りが寄り添っていることに気付く。クレジットにはグリーンマンダリンとあるが、確かに酸味がキリッとした緑色のオレンジだ。このシトラスがフローラルの重たい分子を上げてきているのだろう。明るく、誰からも愛されてきたプリンセスのイメージにふさわしいイントロ。

5分後、南太平洋系のフローラルに感じた香りに少し影が出てくる。かなりソリッド&スパイシーなフローラルになる。これはもうガーデニア系ではなく、ツンとした花粉っぽさが感じられるユリ系の雰囲気だ。ミドルのメイン香料にタイガーリリーとあるので、そのやや強くてエッジの硬いフローラルに変わってくる。だがそれだけではない。香りは刹那的にどんどん変わってくる。香料をバランスよく、しかもかなり豊富に使っていることがわかる。そしてあえてそれらを見せない。全てフローラルの影にひっそりと漂わせている。なるほど。場面は、暗い森に置き去りにされた少女に変わったのだろうか。森の中でうごめく動物の匂いや樹や苔の匂いが、彼女の周囲に漂い始めるイメージ。この影は次第に濃くなってくる。

わずかなカストリウムのアニマリックが効いている。同時に、遠くから漂う甘い花蜜の香りも感じられる。あたりにはさまざまなユリの花が咲き、植物の葉のグリーン、アーシーな湿った土の香りもしている。森をさまようブロンディーヌ姫。不安と畏れと、それでもたくさんの花を摘みたい欲求に駆られる一人の少女。彼女は森で白い動物たちに助けられ、やがて7年の眠りを経て森で大人の女性になる。

このミドルはスパイシーなユリの香りがメインとなる。それは女性として強さと美しさを身に付けた姫の変身ぶりのよう。後半になるにつれ、柔らかなスエード調レザー香や甘いパウダリームスクが出てきて、香りは再び柔らかく甘く変化してゆく。幾多の困難と試練を経て、動物たちの協力を得て森の出口へ向かうブロンディーヌ。ラストは、彼女を見守り続けてくれた白猫と白鹿が蘇り、王との再会を果たし、勇気と忍耐の物語をハッピーエンドにしめくくる。香水ラストの甘い花蜜の香り、パウダリーな白いムスク香は、安心と平和を象徴するかのよう。持続時間は長く、つけてから8~10時間ほど柔らかく続く。

 悲しみに満ちた少女は、森での試練を経て、美しいプリンセンスになる。それはおとぎ話でも何でもなく、女性の人生そのものの道程かもしれない。フラッサイはどの香りも本当に素敵だ。だが、まだ日本では販売されていない。ぜひネットで検索して世界の窓を開き、その美しい香りを手にして心を震わせてほしい。

これは、いまだ暗い森をさまよう女性たちへのメッセージだ。光の出口は必ず訪れる。自分で自分にダメ出しの呪いをかけることなかれ。

自分全肯定。全ての女性に勇気と希望を与える香り。フラッサイ、ブロンディーヌ。
このエントリーのタグ: ☆☆☆☆☆☆6

キリアン ローリングインラブ

 香水のレビュー(満点は☆7)
☆☆☆☆☆★★(5点)


キリアンのローリングインラブはとても危険な香りだ。深紅のボトルに秘められたジュース。そこにはどんなに濃厚でセクシーな香りが潜んでいるのかと想像すると、たいてい肩すかしをくう。このセンシュアルなレッドボトルに充填されているのは、意外にも、とても穏やかでしっとりとしたクリーミーな香りだ。

ローリングインラブは、最初から最後まで、とてもマイルドなアーモンドミルクの香りがする。それのどこが危険なの?そう思うかもしれない。確かにそうだ。何年か前から飲み物としてもメジャーになった感のある、あのアーモンドミルク。本当にそんな香りがする。ちょっと嗅いでみただけでは。

ラグジュアリーな金メタルキャップをとってローリングインラブをスプレーする。最初にスッと鼻を通るのは、透明でビターな香りだ。すぐにビターアーモンドの香りだとわかる。ただし、このスッと抜ける苦味を嗅ぎ慣れていなければ「あれ、つけたのに何も匂いがしない?」と思うかもしれない。

5秒もしないうちに、コクのあるロースティーなアーモンドの香りがしてくる。それは塩をまぶしたあのアーモンドの匂いそのものだ。ご丁寧に塩味の雰囲気まできちんと再現されている。こんもりナッティーな雰囲気は、色で言うなら茶色。なぜこんなにもロースティーなアーモンド香を再現したのだろう?と疑問に思うほど。

数分後、ほんのわずかチェリーの甘苦い香りが抜けていく。そしてナッツの塩味がうすれ始めると、次第にミルクの香りがオーバーラップしてくる。あふれるほどのミルク。ナッツの茶色いコクに白いミルクがかかり、あたりはアーモンドミルクの淡いベージュ色の気配に包まれる。それは女性の柔肌の色、と言ってもいいかもしれない。ここからがローリングインラブの真骨頂。しっとりしたアーモンドミルクの香りが、どこまでも柔らかく広がってくる。甘さはあまりない。アイリスのパウダリー、ヴァニラのクリーミーも顔をのぞかせてきて、白一色になってくる。そこにほんのわずか、冷たい感じのフローラルのタッチがある。クレジットによればフリージアだろうか。鼻ででかぎ分けられるほどではないけれど。

このしっとり白いアーモンドミルクノートが、3~6時間ほど、肌の上10cmあたりで続く。ラストはトンカビーンの甘さとホワイトムスクのフローラル感を保ちつつ、白くミルキーな香りのまま消えてゆく。

よほど鼻を近づけないとかぎ取れないほどの淡い香り立ち。最初につけると「ん?キリアンでこんな淡い香りなワケがない。これは偽物では?」と思うほど、他のキリアンより控えめで繊細な印象。本当に深紅のボトルの印象とはかけ離れて感じられる点。それでも。

ローリングインラブは、やはり危険な香りだと思う。なぜなら。

この香水には、エロティックな肉体の交わりを連想させる裏要素が、多分に込められているからだ。

アーモンドミルクの香り。言葉で聞くと心惹かれるが、アーモンドとはそもそも男性器を意味する言葉でもある。そこにミルクノートを寄り添わせた、ということは何を暗喩しているか推して知るべしということだ。男性のミルク、これは確実に裏メッセージとしてある。

さらにキリアンは、今回この香りをリリースするにあたって、しきりにスキンパフュームを作りたかったと言っている。女性の肌の下の匂い。それはこれまでのキリアン香水の打ち出してきた方向性とは真逆だ。これまでは、どちらかというと「これでもか」とばかりに香料をふんだんに取り入れ、濃厚な主張をする作品が多かったが、この作品は意外なほど内省的で裡にこもっている。もっと言うと「主張」とは真逆の「何かを吸いこむような香り方」をするように感じられる。もしも「女性の肌がアーモンドミルクを吸いこむように香る」としたら、それは愛の交わりそのもののイメージだ。

むろん深読みかもしれない。感じ方はそれぞれ異なるはず。ただ、鼻をよほど近づけないと、この香りが感じられないように作っているのは事実。それも計算づくだとすれば、さらに納得がいく。これはつけた人のプライヴェートゾーン、つまり超至近距離に入れる者にしか嗅げない香りなのだろう。その肌に口づけできる者にしか嗅げない香水。

 ローリングインラブは、ミルキー、クリーミー、パウダリー、ムスキー、それら官能の多層構造をもつ白いミルフィーユ香水だ。時間が経つにつれ、特に女性の肌の上で、白く美味しくできあがっていく香り。愛し合う者たちだけが確かめ合える秘密の匂い。

真っ赤な唇から漏れる吐息。汗ばんだ肌は塩ナッツの匂い。狂おしい夜のしじまがふけてゆく。そして切ない獣の咆哮。二人はミルクの匂いに包まれ、一つになる。

恋に抱かれて、肉欲にまみれる。愛の中毒、ローリングインラブ。

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ゲラン ランスタンマジー

 香水のレビュー(満点は☆7)
☆☆☆☆☆☆★(6点)


女性は、ある日突然天使になる。美しく変貌する。それは緩やかな変化ではない。「キレイになりたい」本気でそう思った瞬間、願いはかなう。美の女神は突然、天空から舞い降りる。

ゲランのランスタンマジーの香りを嗅いでいると、そんな戯れ言も信じたくなる。整形とか吸引とかそういうことだけではない。女性が本気で「美」を目指したとき、その心や体に起こる変化は本当に劇的だ。「これが自分?」と思えるほど美しくなることがある。そして世界が今まで以上に光輝く。ランスタンマジーの香りは、女性にこの上なく優しいパウダリームスクな銀の粉を振りかける。キラキラとまるで魔法のように。

ランスタンマジーは、香水帝国ゲランの転換期に香水開発ディレクターに就任したシルヴェーヌ・ドゥラクルト女史が、シムライズの女性調香師ランダ・ハマミと共に2007年に作ったオーデ・パルファム。香水作りの秘伝秘法が、ゲラン家出身の一人の男性調香師だけに託されてきたかつての伝統を打破し、チーム力と女性の力で作った香水として異色の作品。テーマは「女性の夢がかなう瞬間」。一時廃盤となったが、現在はビーボトルで復活している。30mlで税込9350円。

夢を現実にするともいわれる香水、ランスタンマジー。それはどんな香りなのか?

ランスタンマジーをスプレーする。その瞬間、肌の上に冷たい清涼感あるアニスの香りが広がる。アニスの香りはキッチンスパイスの八角そのもの。クールで知的な女性の印象。ただし冷たくはない。明るい酸味豊かなベルガモットが輝きを添えているからだ。スッと心に沁みこむスッキリ透明感あるトップは、洗練されたフェミニンを感じさせる。

5分後、シトラスとスパイスが消失するにつれ、やや明るいフローラルグリーンな香りがしてくる。クレジットによれば、フリージアの黄色い花の部分だろうか。すぐにミモザやヘリオトロープ系の甘くパウダリーな花粉っぽい香りが重なってくる。とても重層的でロマンティックな雰囲気になる。甘くかぐわしい黄色と白の香り。アニスのスッとする清涼感も残しつつ、華やかさが徐々に増してくる。

10分後、香りはまた変わる。フローラルの核が、温かみあるドライなスパイシーカーネーションになってくる。そこに、キリッと苦いテイストがどんどん主張してくる。これはビターアーモンドの香りだ。温度は上昇し、情熱的に温かみを増してくる。まるで何かに夢中になって、一途にそれを追いかけているようなスパイシーフローラル。それは仕事?恋?それとも自分磨きだろうか。

そして。ランスタンマジーはこのあとがすごい。つけて20分後、はっきり驚く。

黄色いミモザの甘い花粉香、赤いカーネーションのスパイシーフローラル。それらが減衰するにつれ、とんでもなく優しく、ふんわり柔らかい白いパウダリー香が出現する。それはもう、お風呂上がりの赤ちゃんの肌に、ふわふわのパフでぱふぱふしてあげるベビーパウダーの香りそのものかと思うほど。この「ふわふわのパフでぱふぱふ感」が悶絶級。ドラクエのぱふぱふ娘も真っ青。(←は?)これはもう赤ちゃんの香りというよりママの香り。母でもお母さんでもない。どこまでも優しく柔らかな愛に満ちた理想のママの匂い。ママパウダー。

ランスタンマジーは、このミドルのむせ返るパウダリーな香りが真骨頂。そこまでの変化も劇的ですばらしいが、ミドルから訪れる官能的な、苦いアーモンド&甘いパウダリーに撃沈する香り。アーモンド香は通常トップで出てくる苦みなのでラストに出てくるのは面白い。これがこの香水で開発したとされている「ムスキナーデ」のブレンドだろう。アーモンドウッドとパウダリーホワイトムスク。この泣けるパウダリー香が、8~9時間ほども続く。

 これは本当に女性が女性のために創った香りだと思う。ママと赤ちゃん。どんなに偏屈に育った人でさえ、この生まれたばかりの頃のミルキーでシルキーなパウダリー香は原初の匂い記憶として心の奥底に刻みこまれているもの。だから、男性もこの香りには果てしない郷愁を覚えてしまうだろう。これは安心・安全と愛情に包まれていた頃の、まっさらな繭の記憶の香りだ。

どんなにあきらめてきただろう。仕方ないって。どんなに髪で顔を隠してきただろう。人に笑われたくなくて。そんな人はランスタンマジーの香りに包まれるといい。この香りはいつもあなたを抱きしめてくる。誰よりも愛情深く、どこまでも優しく。「あなたはとてもかわいい。大好き。もっともっときれいになれるよ。」ママの笑顔のように。

その瞬間。銀色の濃密なパウダーがあなたを包む。転生の魔法。運命の瞬間が訪れ、空から女神が微笑む。

ランスタンマジー、光の粉に包まれて。女性は美しい天使になる。

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